一条工務店で二世帯住宅を建てたとき、親世帯の間取りも設計打ち合わせも、すべて私(息子)が行いました。
両親のリクエストは「寝室は夫婦それぞれに」という一点のみ。
あとは「まかせるよ」ということで、適宜好みは聞きましたが、内装の細部にいたるまで私が決めています。
両親いわく
「いずれあんたたちが歳とったら下(親世帯)に住むんだから、自分たちが住みやすいようにすればいい」
とのこと。
そもそも二世帯住宅の間取りは単世帯の比ではなく難しい。
- 親世帯の面積(1階)で子世帯の面積(2階)がほぼ決まる
- 水周りの位置は上下階で合わせたほうが無難
- 生活音の配慮も考慮した間取りにしたい
これらの制約が組み合わさると、単純に『2つの家を積み上げる』という話ではなくなります。
両親の意見も加味する必要があったなら、さらに難易度が上がるでしょう。
一任してもらったからこそ制約を整理しながら進められた、というのが正直なところです。
ここでは二世帯住宅の間取りの難しさや親世帯の間取りで工夫したポイントなどを紹介します。
なお子世帯側の間取りの工夫はこちらの子世帯編の記事で紹介しています。
親世帯と子世帯、設計の進め方はどう違ったか
子世帯は自分たちの暮らしを直接イメージしながら設計できますが、親世帯は生活するのは自分ではなく親です。
子世帯編で書いた工夫と同じ考え方(窓・照明・扉の設計思想)はそのまま親世帯にも適用しています。
一方でひとつ読みにくかったのが収納のボリューム。
両親が引越しに際してどこまで断捨離するかが正確には把握できず、「建物に合わせて荷物を持ってくよ」ということでした。
万が一足りなければ子世帯の小屋裏収納で吸収する前提で計画しました。
これが正解だったかは続編の「二世帯住宅に住んでみてわかったこと編(仮題)」で紹介したいと思います。
【工夫1】親世帯は1階完結+できる範囲のバリアフリー
高齢の親(ともに80代)が暮らす空間として、まず当然に決めたのは
「親世帯はすべて1階で完結させる」
階段を使わずに生活が完結できることが、老後の暮らしやすさの基本だと考えました。
手すりについては、両親から「玄関・風呂・トイレに付けてほしい」というリクエストがあり、いずれも一条工務店の標準仕様の範囲で対応できました。
玄関アプローチや玄関の段差については、スロープを設置する案も検討しましたが両親とも相談して、
「現状で車いすは不要だし、将来の可能性を考えすぎても仕方ない」
とまとまり、車いすの生活は想定しないことに。
ただし玄関を上がれば一条工務店の標準仕様でバリアフリーになります。
設計時の思考:「将来に備える」と「今必要なものに絞る」のバランス
バリアフリーの設計は「将来こうなるかもしれない」という話が多く、考えすぎるとキリがありません。
私自身55歳で、正直なところ高齢者の生活を完全には想像しきれません。
両親本人の意向を確認しながら「今必要なこと」「必要になると判っていること」に絞って決めるのが現実的なやり方でした。
【工夫2】音の問題には間取りで対処、対処しきれない部分に防音材を
二世帯住宅を検討するとき、多くの人が真っ先に心配するのが音の問題ではないでしょうか。
基本の対処法は間取りの工夫
水周りの排水音や生活音、いずれも基本的な対処法は同じで、
「上階の音が出やすい部屋の下には、音を許容しやすい部屋を配置する」
ことです。具体的には、
- 水周りは上下階で位置を揃えてる
- 1階の寝室の真上には、活動量の少ない部屋(寝室・クローゼットなど)を配置する

二階水周りは一階玄関と水周り上にある
ただし完璧を目指すと間取りが破綻する
これを徹底しようとすると、間取りの制約がかなり厳しくなります。
水周りの位置・寝室の位置・LDKの位置がすべて連動して決まってくるので、どこかで妥協が必要です。
我が家もできる範囲で頑張りましたが、完璧には対処しきれていない部分もあります。
間取りで対処できない部分には防音材で補った
間取りで対処しきれなかった部分には、防音材(グラスウール)を追加しました。
一条工務店では1階天井や壁に坪12,000円(2024年時点、天井)でグラスウールを追加施工できます。
下の動画を参考にして、「入れないよりはいいだろう」という割り切りで採用しています。
設計時の思考:まず間取りで工夫して、それでも難しければ次善の策で
音の問題は
- まず間取りの工夫でできる限りの対処する
- それで解決しきれない部分は防音材などで補う、
という順番で考えるのが現実的です。
間取り全般でも言えることですが、部分部分の理想や完璧を求めると迷宮に迷い込みます。
「ここを妥協すれば他の部分はうまくいき、総合的にはより良い間取りができる」
のであれば、妥協して次善の対処に切り替えることも大切です。
実際に住んでの音の感じ方がどうであったかも「二世帯住宅に住んでみてわかったこと編(仮題)」で紹介します。
【工夫3】トイレは寝室の近くに、将来を考えて広めに
高齢になると夜中のトイレの回数が増えます。
両方の寝室からトイレへの距離を短くすることは、設計の早い段階から決めていました。
両親の寝室双方からトイレまでは数歩の距離です。

広さは母にも相談して、将来的に介護が必要になった場合にも対処しやすいよう1.5畳タイプを選択。
介護者が一緒に入れるゆとりがある広さです。
設計時の思考:余裕のある設備は「今」も「将来」も両方使える
介護対応を意識した選択は、将来だけでなく現在の快適さにもつながります。
介護が必要なくても、広いトイレはゆったりとして気分がいいのでスペースが許せば検討したいですね。
【工夫4】扉はなるべくつけず、つけるときは引き戸にした
親世帯の扉の方針は2つです。なるべくつけない、そしてつけるなら引き戸。これは子世帯でも同じ設計思想で、二世帯共通で徹底しました。
扉はなるべくつけない
扉をつけると、開け閉めの動作が毎回発生します。
両手がふさがっているとき、体が不自由になったとき、この「毎回の動作」が思いのほかストレスになります。
なので扉を減らす分、家の中の移動がスムーズになります。
これができるのは、一条工務店の全館床暖房・全館床冷房という特性があるからです。
一般的な家では部屋ごとに扉で仕切って冷暖房の効率を保つ必要がありますが、一条工務店の家は家中の温度差が小さいため、扉で空間を仕切る必要性がそもそも低い。
その特性を活かして「扉を減らす」という前提で間取りを設計できました。
つけるときは引き戸にした
また扉が必要な場所には引き戸を選んでいます。
開き戸は開けたときに扉が空間に飛び出して通路を塞ぐことがありますが、引き戸は邪魔になりません。
高齢になって体が不自由になったときにも開閉動作が楽です。
ただし引き戸は開いているときに壁を塞いでしまうので、コンセントや収納の計画の制約になります。
引き戸を計画するときは、周辺の壁の使い方とセットで考える必要があります。
設計時の思考:一条工務店の強みを理解して間取りに活かしきる
扉を減らすという判断は、一条工務店の全館空調という強みを間取りに活かした一例です。
選んだハウスメーカーの強みを改めて意識して間取りに反映させる。
この視点を持てると、より住みやすい家づくりが実現できると思います。
【工夫5】廊下を極力なくし、スペースを有効活用した
親世帯は一階と二階の部屋割りの都合上、少しコンパクトな間取りになりました。
そこで徹底したのが廊下ナシを目指すという方針です。
子世帯も廊下少な目の設計ですが、親世帯は廊下と言えるようなスペースはなくなりました。
廊下は移動するためだけの空間ですが、坪単価のコストがかかります。
廊下を減らしてその分をリビングや収納に使えれば、同じ面積でも体感的な広さが変わります。
この方針から生まれた3つの具体的な工夫を紹介します。
5-1:玄関ホールをリビングと一体にした
玄関ホールをLDKとは扉で仕切らず一体にすることで、リビングが広く感じられるようにしました。
結果的にキッチンを中心として親世帯の全部屋と子世帯との連絡口をつないだ回遊動線も出来上がりました。

これは一条工務店の全館床暖房・全館床冷房があるからこそ実現できる設計です。
どこにいても温度が均一なため、廊下とリビングを仕切る扉が不要になります。
通常の住宅では廊下を仕切らないと冷暖房効率が下がりますが、一条工務店の全館空調ではそのデメリットがありません。
5-2:通り道のスペースに書庫ユニットを設置した
リビングから水回りに通ずる通り道のスペースを工夫して書庫ユニットを設置しました。

子世帯の洗面室に書庫ユニットを入れた発想と同じで、「通るだけの空間」を「使える空間」に変えています。
子世帯での書庫ユニットの使い勝手についてはこちらの記事で詳しく書いています。
5-3:脱衣室奥にシステムクローゼット+ロールカーテン
脱衣室の奥に1坪のWIC用のシステムクローゼットを裸で置いています。

システムクローゼットを壁・扉ナシで設置
本来は壁で囲んだWIC内で使用するユニットですが、スペース的に壁と扉が作れなかったため、垂れ壁を付けてロールカーテンで目隠しする設計にしました。
WICの通路部分を脱衣所が兼ねています。
斬新な使い方で好き嫌いがあるかもしれませんが、実用上は十分機能しています。
むしろ扉がない分、収納スペースとしての出入りがしやすいとも感じています。
設計時の思考:制約があるからこそ工夫が生まれる
親世帯は面積的な制約があったからこそ、廊下をなくすという方針を徹底できました。
「狭いからこそ何を削るか」と考えると、結果的にコンパクトで使い勝手の良い空間になることがあります。
まとめ
親世帯の設計を振り返ると、子世帯編とアプローチは基本的に同じです。
「なぜそうするか」を言葉にできるまで考えてから決める、という姿勢は変わりません。
1つだけ大きな違いがあり、住むのは自分でなく親であること。
自分の暮らしは直接イメージできますが、高齢の親の暮らしは想像力が必要です。
両親本人に確認しながら進めたことで、思い込みを避けられた部分は多かったと思います。
二世帯住宅は制約が多く、単世帯住宅より間取りの難易度が高い。
できあがった間取りで実際に住んでみてどうだったか。両世帯の感想は今後の記事で紹介します。


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